研究概要

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研究概要

セルフ・ネグレクトは、自分自身のケアと住環境のケアができない、あるいはしない状態を指します。マスコミでよく取り上げられている、いわゆるゴミ屋敷は住環境のケアができない深刻なセルフ・ネグレクトの一類型です(野村、岸他, 高齢者虐待防止研究.2014)。

国外の調査では、高齢者の約9%にセルフ・ネグレクトが存在し,年収が低い者,認知症,身体障害者では15%に及ぶと報告されており( Dong et al, The Journal of The American Medical Association ,2009.J Aging Health.2012)、 1年以内のセルフ・ネグレクトの高齢者の死亡リスクは、セルフ・ネグレクトではない高齢者の5.82倍であったと報告されています( Dong et al, The Journal of The American Medical Association ,2009.J Aging Health.2012)。

国内における高齢者の調査では、生前にセルフ・ネグレクトの可能性があった事例は約8割であり、孤立死はセルフ・ネグレクトの予備軍であると指摘されています(ニッセイ基礎研究所, 2011)。セルフ・ネグレクトを類型化した研究では、生活環境が劣悪な事例では、サービス拒否、近隣との孤立、複合的な問題を抱える事例が、より孤立死と関連する傾向があると示されています(斉藤・岸他,厚生の指標,2016)。

特にごみ屋敷状態になったセルフ・ネグレクトは、健康状態が悪くなっても、他の人の介入や支援を拒否し、生命にかかわる状態にあっても助けを求めないため、より深刻な状態に陥りやすいことが指摘されています(岸他,高齢者虐待防止研究,2021)。フォーマル・インフォーマルな支援者の関わりの頻度が高いほど、死後発見までの日数が短かったこと(野村・岸他、高齢者虐待防止研究,2022)、支援者が生命のリスクを常に見極め支援の質を高めるために支援ネットワークの構築が重要であることが指摘されています(岸他,日本在宅ケア学会誌,2021)。

定義・概念

セルフ・ネグレクトの定義・概念

  • 「健康、生命および社会生活の維持に必要な個人衛生、住環境の衛生もしくは整備、または健康行動を放任・放棄していること」

アセスメントツール・支援ツール

ツールの位置づけ

  • 個別支援の展開時に用いるツールとして、5種類の「アセスメントツール」と3種類の「支援ツール」を作成した。
  • アセスメントツールは、現状から“アセスメントして判断”するために必要な情報を整理し、現状を見える化できることが特徴である。
  • 支援ツールは、本人やその家族、地域住民等と直接関わって情報収集したり、支援・対応を検討するためのツールである。
  • 支援ツールは、セルフ・ネグレクトの人やその家族に対してどのような支援を実施するのか、相談者や近隣住民にどのような姿勢・態度で対応するのかといった、具体的な支援方法のプロセスが示されている。
  • アセスメントツール・支援ツールは、事例把握・現状把握から支援計画の立案、実施、評価、モニタリング、計画の見直しというPDCAサイクルの中で活用する。

アセスメントツール

ツール備考
表1 セルフ・ネグレクトサインシートセルフ・ネグレクト状態の兆候があるかを見つける
表2 セルフ・ネグレクトのスクリーニング5項目セルフ・ネグレクトの可能性があるかを見分ける
表3 セルフ・ネグレクトアセスメントシート事例の強みと弱みを整理し、支援の方向性を見える化する
表4 セルフ・ネグレクト深刻度アセスメントシート事例の深刻度をアセスメントする
表5 セルフ・ネグレクトによる近隣への影響アセスメントシート近隣への影響をアセスメントする

支援ツール

ツール備考
表6 支援評価票支援内容やアセスメント結果を、セルフ・ネグレクト改善の視点から評価する
表7 把握・見守り期の支援ツール支援ツールは、支援プロセスに沿って3種類がある
表8 初動期の支援ツール
表9 展開期の支援ツール支援ツールは、本人やその家族、地域住民等と直接関わって情報収集したり、支援・対応を検討するためのツールである

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詳細情報

セルフ・ネグレクトのアセスメントとケア
ツールを活用したゴミ屋敷・支援拒否・8050問題への対応

著 者 岸恵美子(編著)
発行日 2021年6月20日
発行所 中央法規出版

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